温かい風が吹き抜けて


『染まってはいけない』


誰かが呟いた。


だから僕は


冷たい風に身を任せ


下を向いて歩く。



喩えそれが間違いだとしても


今更、変えられるはずもなく……

綺麗。

キレイ。


貴女は、綺麗。


傷ついてるの、知ってるよ。


苦しんでるの、知ってるよ。


それでも笑う、貴女は綺麗。


もっと、汚してしまいたくなる。

もっと、いっそ、ぐちゃぐちゃに。


僕の此の手で壊してあげる。


だから、ほら。


近くにおいで??


指先から抜けていくように
記憶が
蒼白の砂となって落ちた。



覚えていなければならない人
決して忘れてはならないモノ


全てが
零れ落ちてしまった。


こうして僕は
彷徨い児となったんだ。

嗚呼……

月が綺麗。

呼吸も止まるわ。

吸い込まれてしまいそう。
あの空に浮かんだ飛行機雲が
あまりに綺麗で
綺麗すぎて

心も
躰も
全部、全部
消えてしまうかと思った。

あたしの全てを
持っていかれるかと
思うほど


届かない
美しさだった。


そう、
それはまるで
君のように
この手が決して届かない
この世のものではない
美しさ。

飛行機雲



月が霞んでる。

こんなに晴れた夜なのに。

星の光が届かない……。

もうすぐ私の世界は

闇に染まるの。


穴が空いてしまっている。

此処にも。

彼処にも。

嗚呼……、

空を壊したのは、君だったね。

僕の空を。

空、空を。

其の代償に、

君は何を支払うのだろうね??

先ずは逃げられないように

此の、

脚を貰おうか。


あの火の明かりのように

真っ赤になれたなら

少しは 貴女に近づけるかしら??

あの海のように

真っ青になれたなら

少しは 貴女に近づけるかしら??

あの月明かりのように

真っ白になれたなら

少しは 貴女に近づけるかしら??

この線を飛び越えて

貴女に もっと近づくには

どうしたら良いのかしら??

ねぇ。

貴女の考えを 聞かせてよ。

黙ってないで

眠ってないで

私の質問に 答えてよ。

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